富士山高所科学研究会



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高橋 宙(気象研) [2005年3月23日プレゼン資料]

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 富 士山頂はどこまで自由対流圏?

高橋 宙(気象研究所)

富士山頂で観測する利点「自由対流圏だから」「自由大気を捉えられるから」:長距離輸送(シグナル)とローカル汚染(ノイズ)の切り分け:観測プラットフォームとしての観測データの質の向上

富士山の気象平年値:風が強い、寒い、日差しが強い、気圧が低い

富士山の気圧:現地気圧の月別平年値:静岡・甲府・東京・札幌・那覇・富士山:富士山は夏に気圧が高く、冬に気圧が低い:下界と逆位相!

富士山の水蒸気量:季節変化が大きく:多い時と少ない時で100倍くらい変動している!:大気化学へのインパクトは?:乾燥しすぎだと測れない!

降水量は山頂では測っていない:横殴りに降るので通常の計測ではダメ:屋久島の年間降水量平年値:全国の平均年間降水量平年値:富士山腹、標高1300mの太郎坊の、年間平均降水量(非公式):国内屈指の多雨地帯!:元富士山測候所長の藤村郁雄氏考案の「山岳雨量計」:1947年9月のカスリーン台風時の雨や、風の弱い時の雨、風が強い時の雨、梅雨末期の雨などを上と横から観測

富士山の風(極値):最大瞬間風速:下界の極値:台風18号による宮古島:世界記録:米グアム島のアンダーソン基地(参考記録)

富士山の極値(気温):最高気温:最低気温:国内最低:冬期の富士山の平均気温:南極昭和基地の冬期の平均:20℃に達したことがない!:国内最低気温記録は富士山ではない:富士山と南極の冬の平均気温は同程度−やっぱり極地だ

自由大気って何が「自由」なの?:自由とは、他のものから拘束・支配を受けないで、そのもののあるがままにあること:自由大気−空気の運動に対する地面摩擦の影響が無視できると考えられる高さにある空気(和達清夫編、気象の辞典):富士山頂は地表に位置するが、突起した地形の最上部に位置するため、地表からの影響を受けていない大気を採取できると言われている

富士山は観測鉄塔になれる?:大気微量物質の半球規模輸送:微量気体・エアロゾル・放射性物質・微生物:大気境界層・自由対流圏・対流圏・成層圏

他の山との形状比較(東西断面)

西遠望:南アルプス・光岳・上河内岳・恵那山・聖岳・赤石岳・悪沢岳・七面山・毛無山・御嶽山・木曽駒ケ岳・農鳥岳・間ノ岳・北岳・背後に乗鞍岳・焼岳・奥穂高岳・中央アルプス・北アルプス

北アルプス・奥穂高岳・槍ヶ岳・常念岳・立山・剱岳・蓮華岳・爺ヶ岳・鹿島槍・五竜岳・白馬岳・編笠山・権現岳・阿弥陀岳・赤岳・横岳・八ヶ岳・入笠山・甲府

富士山は小さな突起:地球の半径(約6400km)からみれば、富士山は小さな突起に過ぎない。

富士山頂は対流圏の真ん中:富士山頂の上にある空気の量、下にある空気の量(富士山頂と静岡の月別平年気圧から算出:見上げれば大気の60%強、見下ろせば大気の40%弱:「大気の中層を見ている」とか「対流圏の真ん中くらいを見ている」といえる!)

富士山は大気境界層の上か?:富士山における大気化学観測の利点と弱点:期待される利点−広域的に見た代表性・ノイズ(局所汚染)のない均質な大気:不安となる弱点−比較対象とすべき観測点の欠如

地吹雪は大気化学観測としてはノイズだ!:地吹雪=一度積もった雪の再飛散現象:2001年1月1日朝、山頂上空は快晴だったが、地吹雪がひどく、剣が峰に達した登山者はいなかった:新世紀初日の出(富士山測候所の玄関前から)

富士山頂では強風時に高温事例はない

よく晴れても、富士山頂は気温がなかなか上がらない:例外的に高温となる時は風が弱い:横軸=気温、縦軸=全天日射量:富士山・つくば

富士山頂の気温・露点温度・相当温位:気塊の入れ替わり頻度が暖候期と寒候期で異なる

気温・露点・相当温位の2月・7月の比較

富士山の気温40年分:地球温暖化とか気候変動の検出・観測は、近傍の都市化率がほぼ無いとみなせる富士山頂で議論したらどうか?

ハワイ・マウナロアの主要化学種(GAWデータから):富士山の気温変動と似たタイプの変動を見せるのはオゾン濃度:二酸化炭素・メタン・フロン類・オゾン

高山気象台の効用「富士案内」(野中至、1901):余は今、高山気象を必要とするゆえんにつき、その一斑を左に掲げん。気象学に関する件:今日気象の原因にして不明なるもの多きゆえんは、全くその発作する空気上部の有様を探求し得ざるにあり、暴風雷電もしくは霜露のごとき皆しからざるはなし、また天気の変化のごときも多くは上部より及ぼすものに似たれば、高山において不断観測をなし、これを平地のものと対照せば、あるいは数日もしくは数週間後の天気といえども、これを予報することを得んもはかりがたし
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